地域による檜の違いをお届けする檜の産地シリーズ。前回の記事では、三大ヒノキのひとつ「吉野檜」を紹介しました。
今回は、こちらも三大ヒノキのひとつである「東濃檜(とうのうひのき)」を紹介します。
東濃檜の産地
東濃檜は、「吉野檜」「紀州檜」に並ぶ三大ヒノキのひとつで、岐阜県の東濃地方の東部に生息する檜です。この地域は、阿寺山地を挟んで木曽地方の裏側にあることから「裏木曽」と呼ばれており、東濃檜は、木曽五木(ヒノキ・アスナロ(アスヒ)・コウヤマキ・ネズコ(クロベ)・サワラ)のひとつともされています。
東濃檜の特徴
東濃檜は、柔らかくて軽く、非常に加工がしやすい特徴があります。見た目の特徴としては、木目が直通で均一、年輪幅2~3mmで真円を描いています。また、材質が淡いピンク色をしているのも東濃檜だけの特徴です。
なぜ東濃檜の木目が細かくて均一なのかと言うと、この地域の気候に秘密がありました。岐阜県東濃地区は、檜の産地の中では北方にあり、冬の寒さが厳しい地域です。冬の寒さが厳しいと、その分生育が遅いため、細かな木目に育つ、ということです。
木目のきれいさと丈夫さから、東濃檜は、伊勢神宮の20年おきの建て替えにおいては外宮の用材として使用されています。
また、腐りにくくシロアリにも強いです。
東濃檜のルーツ・歴史
東濃地方は、道路や鉄道の開発が遅れていたため、建築に必要な木材を運ぶのに河川を利用していました。細い木は搬送中に折れてしまうので、太めの木だけが運ばれ、細い木は取り残されていました。それを見た先人達が自生の苗木を補植し、樹木間に育った苗木が、東濃檜になったと言われています。現在も、東濃檜は、隣の長野県の木曽檜の苗木を植林し、70年の年月をかけて育てています。木曽地方よりも寒さの厳しい東濃地方では、木目の細かい丈夫な檜が育ちやすいためです。
東濃檜ブランドの確立
東濃檜は、戦後復興材として良質な木材ということで注目を集めました。戦後は、木材製材品の市場が次々と開設され、各生産地の材が品を揃えるようになり、商品価値を高めるための商標を木材に擦り込むようになりました。「東濃檜」という刷り込みもその時に生まれました。
昭和40年半ばには、林野庁の林業白書によって「東濃桧」が銘柄材として紹介され、東濃檜は檜材として確固たるブランド価値を確立しました。
他県の桧製材産地でも「東濃桧」の刷込をすると製品の売れ行きがよいので、業者は「東濃桧」の銘柄材に相応する良材を求めて各原木市場を探し回っています。
こうした、材質の良さや木目の美しさ、またブランド勝ちにより、東濃檜は比較的高価な檜として市場に出ています。
エステックアソシエイツは、東濃檜も含め、檜風呂に適した良材を集めて、高品質の檜風呂製作に活かしています。