美しい木目と気品のある香り。古来より高級な建築材として使用されてきた檜は、日本の伝統文化そのものです。

そのためでしょうか。最近では、急増する海外からのインバウンド旅行者をもてなすために、檜風呂を宿泊施設に導入する例が増えています。

JR四国が4月中旬から京都市内で運営する予定の京町風宿泊施設があります。この施設では、いわゆる「民泊」施設と同様の、旅館法上の簡易宿泊所の営業許可を取得して、通常のホテルとは異なる趣のある建物や中庭を提供できるといいます。

この宿泊施設の目玉が、高知県の檜を使用した檜風呂です。京都風の雰囲気の中に、四国の魅力をさりげなく詰め込み、海外からの観光客に日本文化を味わってもらうユニークな取り組みといえるでしょう。

海外からのお客さまの間でも、檜は日本の文化であり、高級品であるという認識が広まっているようです。これが、訪日観光客の間で檜風呂が人気な理由かもしれません。

2016年の訪日客は約2400万人ですが、日本政府は20年までに訪日観光客を4000万人まで増加させることを目標にしています。これまでのような温泉地のみならず、インバウンド向けの宿泊施設への檜風呂の導入需要は、今後も増えていくと考えられます。

最近では、中国や韓国などのアジア圏で檜人気が高まり、檜の海外輸出が増加しているといいます。面白いのが、海外では風呂というよりも、住宅や家具に檜を使用するのが人気ということです。

とはいえ、貴重な檜文化を守るためには、こうした海外向けの需要に頼っているだけでは十分でありません。檜の楽しみ方は、長い日本の伝統の中で、文化となり培われてきました。それを次の世代へと受け継がせて行く必要があるのです。

そのために、私たちがすべきことは何なのでしょうか。それは、檜の国内需要を喚起し、適切な価格と生産および供給体制を構築していくということです。そして、人々の日常生活に溶け込む檜風呂こそが、檜文化を守り育てるための重要な要素だと私たちは考えます。

時代を遡ってみれば、江戸時代において檜は高級材であり、庶民に身近なものとは言い難い存在でした。先日の記事で述べた通り、歌舞伎や能といった幕府公認の芸能の一流の舞台のみに檜の使用が認められていたのです。

しかし、幸いなことに、今日では、誰もが手頃な価格で、自宅や簡易宿泊所に檜風呂を作ることができます。私たち一人一人が檜に気軽に触れてみる積み重ねこそが、日本の伝統文化を守ることにつながります。

そのお手伝いを是非ともさせていただきたい――。私たちエステックアソシエイツはそう考え、日々、檜の魅力をお客様に届けさせていただいております。